【イベントレポ】〜ベナンで浴衣づくりに励む女性起業家の話〜アフリカビジネスラボ




こんにちは! 恋する旅ライターかおりです。
日本からは心理的にも物理的にも遠いアフリカ。そんな日本とアフリカの距離を縮めたいとの想いから、2016年より毎月開催されているイベントが、「アフリカビジネスラボ」です。

第13回目のゲストはアフリカ西部のベナン共和国で、女性たちとともにアフリカ布「パーニュ」を使った浴衣や雑貨を製作しているChérie COCO(シェリーココ)代表の川口莉穂さん。

アフリカン・プリントが大好きな私も、参加してきましたよ〜! 会場には、青年海外協力隊としてアフリカに赴任予定の方や、これからベナンでビジネスを展開する方、占い師さんまで多彩な顔ぶれが集まりました。

思わず目を奪われる鮮やかなベナン製の浴衣が、どのようにして生まれたのか。興味深いストーリーに、ぜひ耳を傾けてみてください。

「途上国支援」に関わりたい。青年海外協力隊としてベナンへ

青年海外協力隊出身の川口さん。協力隊を志望した動機は、「途上国支援に携わりたい」との強い想いがあったからでした。

川口さん「私は高校1 年生のとき、交換留学でタイに1年間、留学しました。16歳だった私が目にしたのは、自分と同い年ぐらいの女の子が客引きをしたり、幼い子供たちが物乞いをしたりする姿。ショックを受けつつ、当時は何もできなくて……。そのとき、将来的に国際協力や途上国支援に関わる仕事をしようと思いました」

大学ではソーシャルビジネスを学び、就活ではJICAを受けたものの、希望を叶えることができなかった川口さんは、青年海外協力隊としてベナンに赴任することを決めたのです。

川口さん「本当はタイに行きたかったんですけどね。第一希望:タイ、第二、第三希望は空欄にして出したら、まさかのベナン(笑)」

偶然のようにも思えますが、きっと偶然ではないのでしょうね。すべての出会いには意味がある。あ、これは筆者の持論です(笑)。

とある親子との出会いから誕生したファッションブランド「シェリーココ」

ベナンに赴任してからは幼稚園や小学校を回り、手洗い指導やマラリア啓発活動を行っていた川口さんは、現地で生活を送るなかで、一組の親子と出会います。3歳の男の子メメと母親です。父親はおらず2人きりで暮らしていたその親子は、収入を得る術を持っていませんでした。

川口さん「メメとそのお母さんは、近所の人たちから小銭やおかずを分けてもらって生活をしていたんです。でも彼らを助けてあげている周りの人たちも、決して裕福なわけじゃない。この先もメメ親子を支援を続けるのは難しいと、話してくれました。

私は金銭や物資の支援はしたくなくて、他にできることがないかなと考えていたときに、メメのお母さんが仕立て職人の技術を持っていることがわかって。でもミシンもアトリエもなく、仕事ができない状態だったんです」

そこで、川口さんが考えたのが「アフリカ布のパーニュを使った浴衣の製作」でした。

川口さん「私は普段エスニックな柄の洋服を着るタイプではないんですが、ベナンの市場を訪れて、カラフルなアフリカ布に魅了されました。私と同じようにシンプルな洋服が好きだけど、斬新なアフリカ布自体はかわいいと思う女の子って多いんじゃないかなって。そのアイテムとして浴衣に着目したんです」

浴衣づくりに目標を定めた川口さんは、2015年クラウドファンディングで資金を調達。30万円の目標金額に対して、73万8千円の支援金が集まり、材料の調達と工房建設を叶えることができました。クラウドファンディングを活用したのは資金のためだけじゃなく、少しでも認知が広がればとの思いがあったから。



「かわいそう」じゃなく「かわいい」と思って、手にとってほしい

川口さんが着ていた柄のほか、会場にはいくつかシェリーココの浴衣が置かれていました。どれもオリジナリティーがあってかわいい! アフリカン・プリントらしい派手さはあるものの、どこか親しみやすい。これは日本人ならではのセンスなんだと思います。「アフリカ布に興味がない人にも手にとってほしい」、そんな気持ちで川口さんがセレクトした柄は、日本人にもよく似合うんですよね。

青年海外協力隊と並行してシェリーココの活動を続けてきた川口さんでしたが、協力隊の任期を終えたあと、ビジネスとして本格的にブランドを始動することを決意します。

川口さん「NPOにすることも考えましたが、そうすると『アフリカの人が作っているんだ。かわいそうだから買ってあげよう』と思われてしまうかなって。そうじゃなくて、『かわいいから欲しい』と思ってもらいかったので、シェリーココを会社にすることにしたんです」

その後、川口さんは2017年2月に2度目のクラウドファンディングにチャレンジし、181万円もの支援金が集まりました。「季節商品である浴衣だけじゃなく、通年展開できる新商品を開発したい」、そう考えての挑戦だったのですが……。

川口さん「果敢に新商品製作に取り組んだんですが、これがまぁ難しい(苦笑)。私自身、デザイン学校などを卒業したわけではないですし、機械のクオリティも低い。私たちはまだ足踏みミシンなんです。現地の職人さんたちも慣れないアイテム製作に苦戦してしまって……。

浴衣はほとんど直線縫いなのでクオリティを上げやすかったんですが、スマホケースや財布となると、そう簡単にはいかないんですよね。私がデザイン学校で勉強して指導者になるか、指導者になれる人を見つけるか……直近の課題です」

ベナン人が大好き!でも価値観の違いに苦労することも……

縁あってベナンに赴任して以来、どっぷり現地に浸かっている川口さん。彼女がベナンに魅了された一番の理由は、ベナン人の底抜けのやさしさでした。

川口さん「ベナンの人たちって、バカが付くぐらいやさしいんですよ。たとえば仲間がお金に困っていたら、自分が借金をしてまでお金を援助してあげるなんてこともあって。最初は『なんでそこまでするの?』って疑問に思ってしまったけど、だんだんとその価値観に惹かれていきました。

そんな影響もあるのかもしれませんが、私がシェリーココを継続しているのも、ビジネスをしたかったからじゃなくて、大好きなメメとそのお母さんが困っていたから、自分にできることをしたいと思っただけなんですよね。日本の友達が失恋して泣いていたら、合コンをセッティングしてあげるのと同じ感覚というか」

「ベナンが好き、ベナン人が大好き」と話す川口さんですが、やっぱり文化の違いに苦労することも、少なくないのだとか。

川口さん「この夏の各所での催事に向けて、現地の職人さんを2人から5人に増やしたんです。新たに仲間入りした3人は、日本人向けの商品製作に慣れていないので、クオリティを担保するのに苦労していて……。縫い目が曲がっているところをやり直してほしいとお願いすると、やり直してくれるものの相変わらず曲がったまま」

川口さん「2回目、3回目のやり直しを要求すると、『私はこの出来で満足しているから』と言われてしまうんです。やり直したからって、その分報酬が発生するわけじゃないんですが、日本で販売できるクオリティにもっていかないと意味がないので……。初期から関わっている2人の職人が、どれだけがんばってくれているのかが身にしみました。2人には感謝しかないですね」

頭を抱えてしまうことがあっても川口さんがシェリーココを続けているのは、大好きなベナンの仲間たちの笑顔を守りたいから。彼女にとってベナンの仲間たちは家族と変わらない、かけがえのない存在だということが、ひしひしと伝わりました。

川口さん「どんなに辛くても、彼らが生きている限り、私はこのビジネスをやめないだろうと思っています。目の前の人の笑顔を守ることが私のモチベーションで、彼らがいるからやめられないし、やめたくない。目の前の人の笑顔を増やしていって、その結果、世界がちょっとでも良くなればいいなと思っています」

都内各所やオンラインで好評発売中!運命の1着に出会えるかも♡

現在、シェリーココの浴衣は、都内各所の催事場やオンラインでも好評発売中! 詳細は以下をご覧ください。

<販売詳細>

以下は、川口さんが店頭で接客予定です。

AFRIKA ROSE(アフリカローズ)広尾本店(8/4-8/6)

Will gallery白金台(8/11)

以下は、販売のみです。

アフリカンフェスティバル2017(代々木公園)(8/5.8/6)

東京駅南口改札内(〜8/6)

東京ソラマチ(〜8/20) 2階9番地特設会場

イクスピアリ(〜8/31) 2階B’way

独特なアフリカン・プリントの浴衣は、きっとこの夏の主役になることまちがいなし! もしかすると、運命の1着と出会えるかも? お祭りだけじゃなく、普段のお出かけにも着ていきたくなっちゃいますね〜♡

【おまけ】本音が飛び出したQ&Aコーナー

最後は本音満載のQ&Aコーナーから、抜粋してご紹介。

——現地の職人さんのモチベーションを保つ秘訣はありますか?

川口さん「照れくさいんですが、彼らのモチベーションは私らしいんです。年に数回、何カ月かベナンに滞在してがんばってくれるからって言ってくれて……それを聞いたときは泣きました。私のモチベーションも彼らです。ブランド名の『シェリーココ』は愛しい人の呼び名なんですが、私にとって彼らがシェリーココだし、彼らにとっても私がシェリーココだと思ってもらえたらいいなと思って、この名前を付けました」

——ベナンの人たちと深い人間関係が築けたのは、何かキッカケがあったんですか?

川口さん「一番距離が縮まるキッカケになったのは、アトリエで布が盗まれてしまったときかもしれません。結局、布を盗んだのは職人の一人で、私は泣きながら彼女と話をしたんです。『すごくショックだった』って。でもこの話には、思いがけないオチがあって。

布を盗んだ彼女の言い分はこうでした。『私はお呪いのグリグリに操られていたの。私は莉穂のことが大好きだし、布を盗もうなんて思ったこともない』。グリグリとはベナンで信じられている呪いみたいなものなんですが、彼女の言葉を聞いて周りのスタッフたちも、『グリグリなら仕方ないね』って(笑)。

内心『うーん』と思いながらも、『そっか』って言うしかなくて。本当かどうかはさておき、お互い泣きながら話ができたし、彼女も『ごめんね』と謝ってくれました。絆が深まったエピソードといえば、この事件かなって」

最後のオチは、まさかのお呪い!! すごく心温まるエピソードでしたが、後半の「グリグリ」のインパクトに全部持っていかれた感じが否めませんね(笑)。

今回のイベントは、神保町にあるアフリカカフェバー「Blue Baobab Africa ブルーバオバブ アフリカ」にて行われました。セネガル料理とアフリカの飲み物が提供されているこちらのレストラン。今回はカレーのような風味のピリ辛の料理が振る舞われました! 興味がある方は、ぜひ訪れてみてくださいねー!

それにしても、アフリカ布はやっぱりかわいくてテンション上がる♡ 今後、アフリカンファッションブランドを、もっともっと掘っていきたいですね〜。オススメのブランドがあれば、ぜひお問い合わせフォームFacebookからメッセージくださいね!! 恋する旅ライターかおりが取材に伺います♪




ABOUTこの記事をかいた人

1981年、埼玉県生まれ。2014年ライターデビュー。旅と仕事を両立できる働き方にトライしていて、2020年はデンマークに移住して、現地のフォルケホイスコーレに留学しながら仕事を続けています。【働き方/旅/IT】などの分野で、800以上の記事を執筆。 ブログや執筆記事の更新は、FacebookとTwitter、日常や旅写真は、Instagramにてお知らせしています♡