こんにちは! 恋する旅ライターかおりです。
日本からは心理的にも物理的にも遠いアフリカ。そんな日本とアフリカの距離を縮めたいとの想いから、2016年より毎月開催されているイベントが、「アフリカビジネスラボ」です。
今回は、アフリカビジネスの第一線で活躍されているお2人がゲスト。JETRO(日本貿易振興機構)ナイロビ事務所の島川博行さんと、ウガンダ発・静岡発のトラベルブランド「RICCI EVERYDAY」の創業者・仲本千津さんです。
実は、仲本さんは私がアフリカに強く興味を持ったキッカケを作ってくれた方で、以前、イベントでもご一緒させていただきました。
前半は島川さんによる「ケニアのビジネス事情」、後半は仲本さんによる「アフリカビジネスにまつわるお話」です。アフリカでのビジネス展開を考えている人にとって、有益な情報ばかり! アフリカについて知りたいという方も、ぜひご覧ください。
〜目次〜
ケニアではインターネット利用者数が約90%!

JETRO ナイロビ事務所の島川さん
先日私は、アフリカのトイレ事情をリクシルさんに取材したのですが、衛生環境の改善が課題になっている一方で、なんとケニアのインターネット利用者数は人口比の約90%(2016年時点)。日本のインターネット利用率は83%(2015年末時点)なので、なんと日本よりもケニアのほうが利用率が高いんです。これ、驚きじゃないですか?
ケニアの携帯電話の普及率は約84%。成人のインターネットアクセス率は42%、成人のスマートフォン所持率は26%と、こちらもかなり高い比率となっています。人々は、常にコミュニケーション用SNS「WhatsApp」でメッセージをやりとりし、Facebook、Twitter、Instagramも日常的に使われているのだとか。
そして、携帯電話やスマートフォンの普及に伴い増えているのが「モバイルマネーの利用者数」です。モバイルマネーとは、携帯電話やタブレットなどのモバイル端末を利用して金融取引などのサービスを行うこと。
島川さん「ケニアにはモバイルマネーサービス代理店がたくさんあり、そこに携帯・身分証・お金を持っていくと、携帯電話にひも付けられた口座(M-PESA口座)にデポジットを入れてもらえます。このデポジットは他のモバイルマネーのM-PESA口座に送金することが可能です。モバイルマネーの送金を受けたら、代理店にて現金化ができます」
銀行間の口座振込を携帯電話間でできるという感じですね。このモバイルマネーの利用者数は人口比70%と、こちらもケニアで一般的に使われていることがわかります。
テクノロジーを駆使したケニアのスタートアップ企業の紹介

真剣な面持ちで聞き入る参加者のみなさん
このようなケニアの環境変化とともに、テクノロジーを駆使した新規ビジネスが多数生まれているそうです。
M-Shwari (モバイルマネーでのみアクセス可能な銀行口座)
島川さん「アフリカでは銀行口座の普及率が20%未満の国が多数。モバイルマネーは送金や公共料金の支払いは可能ですが、銀行口座の機能はありません。(預金に対して利息がつかない。借入ができない)そこで誕生したのが、モバイルマネーでのみアクセスできる銀行口座です」
<サービス概要>
- モバイルマネー(M-PESA)を使って銀行口座の開設が可能
- M-SHWARI口座からM-PESA口座への出し入れが可能、手数料はなし
- ksh.1(約1円)から預金が可能、利息は日ごとで計算され、支払いは3カ月ごと
- ksh.100からローンの借入が可能。申請から数秒で口座に振り込まれる(ローンを申請するための一定条件あり)
<実績>
- 2012年11月にサービス開始して、約1,600万ユーザーに拡大
- 年間のローン総額がksh.100billion(1,041億円)に達した
hello doctor(携帯でいつでも医者にアクセス可能なWEBサービス)
島川さん「アフリカの多くの国では、医療従事者の数が足りていません。農村地域では近くに病院がなく、乗り合いバスで移動しなければならないなど、時間もコストもかかります。そんな課題を解決するため、携帯でいつでも医者にアクセスができるWEBサービスができました」
<サービス概要>
- ユーザーは携帯で購読登録。M-PESA、もしくはM-SHWARIから、毎月ksh.300(312円)を講読料として支払い、以下のサービスを受けられる。
—登録した医者が年中無休で対応
—少額の医療費積立スキームあり
—緊急時に最大5,000kshの融資
—健康に関する知識を配信
—追加費用で医者から処方箋がSMSで送られる
<実績>
- 2015年にサービス立ち上げ
- ケニアの保健省に承認されており、サブサハラアフリカで唯一、商業ベースで展開している遠隔医療サービス(2016年11月時点)
Kytabu(教科書のバラ売りアプリ)
島川さん「ケニアでは平均で、可処分所得の45%が教育に費やされています。その教育費用のうち教科書が半分を占めており、教科書を買えない家庭も少なくありません。教科書は販売場所も限られており、購入に時間とコストがかかります。
また、ケニヤッタ大統領の目玉政策として、公立小学校の各生徒に1台ずつタブレットを配布する事業がスタートしました。そこで、教科書のバラ売りがアプリで実現しました」
<サービス概要>
- Google Playmからアプリを配信(無料)
- 出版社と提携し、既存の教科書をデジタル化して販売
- ユーザーは必要な部分(ページ・章・本単位)と、必要な期間(時間・日・週・月単位)を選択して購入
- 支払いはモバイルマネー
<実績>
- 10社の出版社と提携
- 1,723冊の教科書をデジタル化
- 12,715人の生徒、276人の先生が利用
その他にも、農家へのテクノロジーを導入した「Illuminum Greenhouses」や、モバイルマネーを活用した少額の医療積立「m-tiba」など、さまざまなジャンルで新規事業が立ち上がっているとのこと。
いずれの事業もガラパゴス携帯からサービスを受けることが可能で、ユーザーインターフェースがわかりやすく、操作が簡単なことから多くの国民が利用しているのが特徴です。
2018年2月にケニア・起業支援ミッションが開催されます
島川さん「アフリカで起業したい、事務所を構えて本格的にビジネスをしたい、途上国ビジネスのヒントが欲しい。こうした日本企業や日本人起業家のみなさんの関心の高まりに対し、アフリカでの起業のハードルが高いと考える方も多数いらっしゃると思います。
現場を見ないことには、何事も始まらないのも事実です。このたびジェトロは、起業家支援、投資および事業設立、ビジネスプラン構築、ビジネスパートナー発掘のために、最前線での情報収集を目的としてケニアに起業支援ミッションを派遣します。みなさまのご参加を心からお待ちしております!」
ケニア・起業支援ミッションの詳細は、こちらからご覧ください。
※ツアーは終了しているため、リンクは削除しております。
母親と共同創業したトラベルブランド「RICCI EVERYDAY」

仲本さんとウガンダの工房で働く女性たち
続いては、ウガンダでビジネスを展開している「RICCI EVERYDAY」の仲本さんが登場! 同ブランドはカラフルでプレイフルなアフリカン・プリントを使用し、デザイン性と機能性を兼ね備えたバッグやトラベルグッズを企画・販売しています。ウガンダの直営工房で製作し、現地の店舗および日本の大手百貨店でのポップアップストアやオンラインで販売するというビジネス展開です。

西武池袋本店でのポップアップストアにて(左:かおり 右:仲本さん)
実は私もRICCI EVERYDAYの大ファンで、以前、メイン商品のアケロバックを購入しました! パッと目を引くこのバッグはコーディネートの主役になり、持っているだけでハッピーになれるんです♪ たっぷり荷物が入るし、縫製も真っ直ぐでキレイ。申し分ない機能性とクオリティは、さすがだなと思っています。
仲本さん「弊社の特徴は、なんといっても母親と一緒に立ち上げたという点です。私がウガンダでビジネスをするにあたり、日本で販売を担当する人が必要になり、母に『一緒にビジネスをやらない?』と声をかけたところ、快くOKしてくれました」
RICCI EVERYDAYの特徴は、以下のとおり。
●50種類以上のバリエーションのアフリカン・プリントをご用意
●デザインのみならず機能性も重視した製品
●日本人のテイストに合った柄を独自にセレクト
●ウガンダに直営工房を持ち、一つ一つハンドメイドで製作
●ウガンダのシングルマザーの生活向上に貢献
仲本さん「2015年1月にウガンダの首都カンパラに工房を立ち上げて、私と現地の女性3人(全員シングルマザー)の4人で事業をスタートしました。ひたすらサンプルをつくっていたところ、クオリティの高いものができて、バイヤーの方にも『これはいけると思う』とお墨付きをいただき、2015年の8月に会社を設立しました」
その後は、ファッション展示会に出展したり、各地の大手百貨店にてポップアップストアを出店したり、多数のメディアに取り上げられたりして、全国にファンを増やしてきたRICCI EVERYDAY。オンラインストアでは、しばらくソールドアウトが続いているほど大人気なんです。
ブランドを立ち上げるに至った3つの理由

豊富な種類のアフリカン・プリントが揃うウガンダの布店
静岡県出身の仲本さん。大学・大学院ではアフリカ政治を学び、銀行に就職。その後は国際農業NGOに4年半勤め、RICCI EVERYDAYを立ち上げました。仲本さんがビジネスを始めた背景には、以下の3つのキッカケがあったそうです。
1、アフリカのネガティブなイメージを払拭したい
仲本さん「ウガンダには透き通るように青く美しいナイル川の源があり、肥沃な土壌があり、ものをムダなく使う人々の生き方があり、エネルギッシュに暮らす人々がいます。これらの魅力が詰まったのがアフリカン・プリントで、斬新なデザインと独特な色彩を用いて、自然とともに暮らす人々の生き方が描かれています。
こんなにも魅力があふれているのに、どうしてもアフリカというとネガティブなイメージがつきまといます。アフリカン・プリントを使って、アフリカのポジティブな面を伝えていけたらと考えました」
2、現地の縫製技術やデザインが追いついていない
仲本さん「ウガンダには色彩豊かな布がたくさん売られていて、オーダーメイドで洋服やカーテンをつくってくれるテーラー(仕立屋)も大勢います。ただ、その品質は必ずしもこちらが期待するレベルには達していません。布を真っ直ぐ縫うような基本的な技術やデザイン性が圧倒的に足りていなく、ずっと使い続けたいものではなかったんです。だからデザインや技術をこちらから提供して、クオリティの高いものを届けたいと思いました」
3、ウガンダのシングルマザーが置かれた過酷な状況を変えたい
仲本さん「ウガンダには経済的な問題やなんらかの事情で、高等教育が受けられなかった人がたくさんいます。とりわけ
女性は仕事が得にくく、なかでもシングルマザーはなおさらです。彼女たちはやむを得ずセックスワーカーになるなど、過酷な状況に置かれています。そんな女性たちに、才能を開花させながら誇りを持って生きられる場所を提供したいと思いました」
アフリカでビジネスを考えている人へのアドバイス

続いて、現地に腰を据えてビジネスを展開している仲本さんならではの目線で、アフリカの事業環境についてお話していただきました。
<アフリカビジネスのプラス面>
・ビジネスチャンスにあふれている
・規制や既得権益が少ない分、新規事業を立ち上げやすい
・豊富な労働人口
・農業(輸出)はポテンシャルが高い
<アフリカビジネスのマイナス面>
・不明瞭な制度、税務
・物流の問題
・価値観の違い
・政治の安定や治安に極端に依拠
・労働人口の教育水準の低さ
・資金回収の困難さ
・市場規模はまだまだ小さい
仲本さん「マイナス面ばかりが並んでしまいましたが(苦笑)、やっぱりそれが現実なんです。法制度がすごく属人的で人によって言うことが違うとか、いい大学を出た人でさえもエクセルをまともに使えないので優秀な人材の採用には苦労するとか。ただマイナス面を知っておくことで、問題を回避することはある程度できるかなと。
また、アフリカの情報はWEB上に出回っていないので、足を使って情報をとっていくしかありません。現地に出向いてネットワークを構築しながら、ビジネスが可能かどうかを見極めてください。そして、最初は小さく試行錯誤しながら、モデルを検証することをおすすめします。
ひとつ利点として、日本のサービスのきめ細やかさは差別化要因となり、ビジネスチャンスに結びつくこともあります。弊社のビジネスもそれに該当し、日本のものづくりに対する考え方は、現地の生産サイドや販売サイドにプラスの効果をもたらしています。」
最後に、仲本さんが自身のビジネスで大切にしている2つのことを教えてくれました。
1、従業員がいかに心地よく働けるか
仲本さん「私は従業員を一番大事に考えていて、きちんとした生活が送れる給与水準を保つこと、貯蓄制度を設けること、年金制度への加入、研修制度の充実など、従業員が安心して気持ちよく働ける環境をつくるようにしています。従業員のモチベーションを保つことで、いいものを生み出せると思っています。
あと気をつけているのは、『魔がさす』事態を回避すること。ウガンダの従業員たちは、私たちの想像を超えた環境で生きていて、たとえばお金が必要になったとき、魔がさして目の前にあるお金を結盗んでしまう、なんてことも十分に考えられます。
しかし私のビジネスを通して社員たちを犯罪者にするわけにはいかないので、彼女・彼らが困ったときに私もしくは会社として力になれるよう、普段から会社の制度構築を進めていこうと考えています」
2、前に進みながら考え、PDCAを回す
仲本さん「戦略を立てて実際に行動してみたけれど、予想とは全然違う結果が出たということは頻繁にあります。私自身、動くことで得られる生の情報を大事にしています。実行→修正→実行→修正をいかにスピーディーにやれるかが、ビジネスをうまく回すカギになると思います」
ボリュームたっぷりのお話のあとは、アフリカビジネスラボ恒例の交流タイム。セネガル料理を囲みながら、ゲストと参加者たちの会話がはずんでいました。セネガル料理を提供してくれた神保町のアフリカカフェバー「Blue Baobab Africa ブルーバオバブ アフリカ」にも、ぜひ足を運んでみてくださいね!
次回のアフリカビジネスラボは、詳細が決まり次第、Africa Quest.comにてお知らせします! 現地でビジネスを展開する方の貴重なお話が聞けるチャンスですよ〜。どうぞ、お楽しみに♪