【イベントレポ】“世界で一番命の短い国”で、就労支援に取り組む若きファンドレイザーの話




こんにちは! 恋する旅ライターかおりです。

みなさんは、西アフリカのシエラレオネという国を知っていますか? 世界で一番悲惨な内戦が起こった国であり、規模の大きな自然災害にも何度も見舞われている国です。

2016年の平均寿命は51.41歳。(グローバルノートより)このことから「世界で一番命が短い国」とも言われます。

今回は過酷な状況下で生きるシエラレオネの人々の就労支援を掲げて奮闘している、若きファンドレイザー(※)下里夢美さんのお話。 なかなか聞けないシエラレオネでのエピソードに、ぜひ耳を傾けてみてください。

※ファンドレイザー……社会課題を解決するために、続々と生まれる魅力あるNPO・社会起業家と、社会貢献に関心のある7割の日本人(2013内閣府調査)をつなぐパイプラインとなる人を指す。(日本ファンドレイジング協会HPより)

よりわかりやすく言うと、「ミッション達成に必要な仲間や資金を集めてくる人」だそう。

下里さんが代表を務める NPO 法人「アラジ」の活動内容

シエラレオネで国際協力の活動を行う下里夢美さん

下里さんはシエラレオネの人々の就労支援を行うため、2014年に「任意団体:夢支援NGO」を創設、2017年7月には「NPO法人アラジ」を法人登記し、代表理事に就任しました。まずはアラジの活動内容をご紹介します。

*ミッション*
誰もが自分の夢を実現するためのステップを踏むことのできる世界

*ビジョン*
シエラレオネ共和国の貧困削減と就労支援活動のため、国際協力活動を実践する。

*日本での活動*
社会を変えるために活動する若者がプレゼンを行う「夢プレゼン交流会」をはじめとしたイベントの企画・運営がメイン。このイベント事業にて日本人にシエラレオネの諸問題の啓発活動を行うとともに、イベントの収益の一部をシエラレオネの就労支援に役立てている。

*シエラレオネでの活動①*
ポートロコ小学校支援。現地のNPOと共同し、ポートロコ村にある3つの小学校にノートやチョークなど物資の支援を行い、国際支援の届かない小学校に対して、政府承認小学校になるまでのサポートを続けている。

*シエラレオネでの活動②*
首都フリータウンで現地のテーラーさんに依頼し、アフリカ布を使った洋服や雑貨を制作・販売。2016年5月よりオーダーメイド事業もスタートし、2017年には就労組合を設立、12名のテーラーとともに日々奮闘している。年間700点のアイテムを制作。

*シエラレオネでの活動③*
2017年に起こった洪水被害(死者600名、行方不明者500名以上、災害孤児は100名以上)の支援として、日本のNGOあいと協力し約30万円を被災した子どもたちに届ける。2018年1月からは、現地パートナーF.C King Kongと共同し、災害孤児となった10名に限定して子どもたちが18歳になるまで継続して教育支援を行っている。

下里さんはイベントで出会った人たちからの寄付やクラウドファンディングを通じて活動資金を集め、これまでにシエラレオネに4回渡航し、現地での活動を行ったそうです。

非常に熱量が高くガッツのある行動には驚くばかり。そんな彼女が、なぜ日本では聞き慣れないシエラレオネで国際協力の活動を始めることになったのか? これまでのストーリーをひもときます。



ドキュメンタリーで見たシエラレオネが忘れられなかった

下里さんがシエラレオネを知ったきっかけは、テレビのドキュメンタリーでした。

「『世界がもし100人の村だったら』というドキュメンタリーを見て、シエラレオネのあまりに過酷な状況を見て、いずれ国際協力の活動をしたいと思いました。私が代表を務めるアラジは、そのテレビ番組出演していた男の子の名前なんです」(下里さん)

大学では国際協力専攻を学び、世界NGOランキング1位のバングラディッシュのBRACにてマイクロファイナンス事業の研修を受けたり、日本でもっとも歴史が古いNPO団体でインターンをしたり、精力的に勉学に打ち込んでいた下里さん。

「将来は継続的に利益を出している大きなNPOに就職しようかと考えていましたが、やっぱりずっとシエラレオネのことが忘れられなくて……

この日のイベントも満員御礼!

さまざまな葛藤のなか、在学中にファンドレイザーの勉強をして資格をとった下里さんは、大学卒業後、横浜のNPOで有給の広報スタッフになりました。このNPOでの仕事をしながら、同時期に自身でアラジを立ち上げたのです。

2017年7月にはアラジをNPO法人化、現在では理事が10人以上いる立派な団体に成長させました。下里さんのエネルギッシュな行動には、目を見張るものがありますね!

ハプニングと苦労の連続。それでも夢を追う日々

下里さんいわく、シエラレオネの空港は「世界一不便な空港」と言われていて、首都フリータウンまでは、3時間に1本しかないフェリーに乗らないと到着できません。さらに飛行機は毎日のように欠航し、1日3便ほどしか飛ばないそう。

すでにおわかりかと思いますが、アフリカ地域のなかでも群を抜いて”行きづらい国”、それがシエラレオネなんです。

「良質なダイヤモンドがとれることで有名ですが、めちゃくちゃ不便だから観光客も来ないし、これといってシエラレオネならではの魅力ってないんですよ(苦笑)。

最初はこの国で何ができるんだろうと不安ばかりでした。でも、太陽のような明るさを持ったカラフルなアフリカの布を見て、現地のテーラーさんと一緒にものづくりをしてみようと思いつきました」

これらはアフリカ布でつくったアラジのアイテム。強いエネルギーを感じる配色と日本ではあまり見かけない大胆な柄は、アフリカ布ならではの魅力ですよね。元気が出るだけじゃなく、身に付けているとオシャレに見えるのもポイント高いと思いませんか?

さっそく現地のテーラーさんとのものづくりを始めた下里さん。ですが、決して一筋縄ではいきませんでした。

「日本で通用するクオリティに仕上げるために、真っ直ぐ縫うとか糸のほつれをなくすとか検品基準を設けているんですが、どうしても基準をクリアできないテーラーさんがいて……。以前、本人にミスを指摘したら『布のせいだ』と自分の非を認めてくれませんでした。

結局、ベテランテーラーさんから注意してもらって、その場はおさまったんですが、あのときは私もさすがに怒りましたね。現地では毎回ハプニングばかりです

今後は、現在付き合いのあるテーラー12名の収入を支える組合を立ち上げ、テーラーさんとしっかり契約を結んだうえで、ものづくりをしようと考えているそうです。5つある検品基準をクリアすること、納品日を守ることは必須。

もし契約事項を守らなければ報酬を差し引く処置も行うとのこと。やはりビジネスとして継続していくためには、それぐらいシビアに付き合う必要があるんですね。

とはいえ、下里さんが現地へ渡って活動している時期は、彼らの収入は普段の3倍になっているそう。この数字だけでも彼女の奮闘ぶりがおわかりいただけるでしょう。

2018年の5月に再び現地への渡航が決まっているという下里さん。小学校支援やものづくり事業のほかに、現地でゲストハウスを運営するプロジェクトも開始予定だそう。アフリカのなかでもとくに貧困に苦しむシエラレオネでの活動は、想像を絶する障害ばかり。それでも彼女の夢を追う日々はつづきます。

シエラレオネの人々が自らの手で夢を実現できるようなる、その日まで。

NPO法人アラジ:http://alazi.org/
アラジ ネットショップ:https://alazi.theshop.jp/
下里夢美ブログ:http://yumemi-blog.com/




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【フリーライター/北欧イノベーション研究家】1981年、埼玉県生まれ。「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材しました。2022年3月より東京拠点に戻しつつ、北欧イノベーションの研究を継続しています。