こんにちは! 旅と仕事を両立しながら生きている、フリーライター/PRの小林香織です。
2017年11月〜12月のうち、3週間ステイしていたバリ島・ウブドで、とても魅力的な方々に出会いました。“次世代に残せる未来”をつくるべく、社会起業家や社会変革を目指す団体の支援を行う一般社団法人「アース・カンパニー」のみなさんです。
今回、同団体の代表である濱川明日香さんと、2017年5月から社員として仲間入りされたという田丸悟郎さんにお話を伺うことができました。

アース・カンパニーの代表である濱川明日香さん
前編はアース・カンパニーのみなさんが実践するデジタルノマドの働き方とバリの暮らしについて、伺いました。記事はこちらから。
テーマは「未来のリーダーに必要な素質」について。今はフリーランスとして働く私も、この先部下を持つかもしれないし、働くすべての人にとって価値のある内容だと思います。ぜひ、みなさんの未来に活かしていただければ嬉しいです!
政府に見落とされがちなリーダーを支援・育成するアース・カンパニー
かおり:アース・カンパニーさんでは、インパクト・ヒーロー事業・バリ島ソーシャル研修事業・ソーシャルコンサルティング事業と大きく3つの事業に分かれているそうですが、インパクト・ヒーロー事業について、くわしく教えていただけますか?
明日香さん:私たちは1年に1人、アジア太平洋のなかから並外れた求心力と影響力で社会変革をもたらす社会起業家をIMPACT HEROとして選出し、全部で3年の間、以下の3つの支援をしています。
① ファンドレイジング(1,000万円以上)
② 機会創出
③ NGO運営コーチング
かおり:これまでは、どんな方を支援されてきたのでしょうか?
明日香さん:1人目は東ティモール人のベラ・ガルヨスさん。インドネシアとの独立闘争により国の9割が壊滅状態となり、2002年に独立した東ティモール民主共和国で、子どもたちのために心と自然を育む環境学校「ルブロラ・グリーン・スクール 」を設立した女性です。

ベラ・ガルヨスさん(アース・カンパニーの公式HPより)
2人目は、インドネシア、フィリピン。また世界の各地の被災地で、貧困・紛争・災害などの理由で医療を受けられない妊産婦・一般患者に対し、365日、医療ケアを無償提供している助産師のロビン・リムさんです。彼女は、ここウブドで無料の医療機関「ブミセハット国際助産院」を開いています。
3人目はマーシャル諸島共和国出身のキャシー・ジェトニル=キジナーさん。マーシャル諸島は温暖化による海面上昇によって、水没の危機に瀕している国です。彼女は、このマーシャル諸島最大の課題に真っ向から立ち向かい、対策を行っている気候変動活動家、詩人なんです。

マーシャル諸島共和国の美しいビーチ
かおり:そうそうたるメンバーですね。水没しそうな国があるなんて、初めて知りました。どのように、支援する人材を選んでいるんですか?
明日香さん:1人目に支援したベラは私の長年の友人で、彼女が何か活動を始めるときは絶対に支援しようと、10年前から決めていたんです。2人目のロビンさんも、私たちのネットワーク内にいた方。3人目のキャシーさんは面識はありませんでしたが、私の専門である気候変動の領域ではよく知られた人で、多くの知人が推薦した方でした。
キャシーさんは「国連を泣かせた女性活動家」として有名で、国連総会でスピーチをした際、事務総長や各国の国家元首が感動し、拍手喝采を受けました。
私たちは、財団とか政府の支援を受けやすいタイプの社会起業家よりも、地域の「希望の星」として人々の信頼と期待を背負い、コミュニティに根付いた変革を起こす、本当に光を当てるべき人々を支援したいと思っています。さらに、それぞれの社会起業家としての成熟度に合わせた支援を提供しています。
かおり:ジャンルなどは限っていないんですか?
明日香さん:限っていませんね。ジャンルも国も経歴も学歴も、一切関係ありません。だから、これまで支援してきた方は年代もバラバラだし、大学を出ていない人もいます。
次世代に残せる未来をつくる「リーダーの素質」とは?

バリ島アグン山噴火により避難を迫られ、学校に行けていない避難所の子どもたちに折り紙を教える明日香さん
かおり:私がこれまでの人生で接してこなかった世界のお話ばかりで、本当にまだまだ知らない問題がたくさんあることがわかりました。これまで支援されてきた方々にも通じると思いますが、これからの時代をつくるリーダーになくてはならない素質はなんだと思われますか?
明日香さん:私、リーダーシップのスタイルって、本当に人それぞれだと思うんです。これまで見てきたリーダーたちのなかには、カリスマ性がある人もいればインスパイアリングな人もいたし、また全然違う素質を持った人もいました。
日本ならではだと思ったのは、自分の弱みをカジュアルに見せられる人。そういう人って周囲に「この人を助けてあげたいな」とか「この人は助けてあげないとダメだな」と思わせる力があるんです。なおかつ、彼らは謙虚で偉そうに振る舞うことがないので、人が付いてくる。
かおり:あ〜、私そのタイプすごく好きですね〜。自分のダメなところをさらけ出せる人。「ここが困っているから助けてほしい」って素直に言える人って、すごく強い精神を持っているんじゃないかなって思います。
明日香さん:国によって色々なタイプのリーダーに出会いますが、こういうタイプのリーダーもアリですよね。海外ではあまり見なかったタイプですけどね。
かおり:おもしろいなぁ。なんか日本のそういうところはいいなぁと思いました。
明日香さん:リーダーに必要な素質は様々ですが、必要不可欠だと思うのは「相手(受益者、クライアント、スタッフなど)の立場になって自分ごとのように考えられる豊かな想像力」です。
かおり:なるほど。リーダーだけじゃなく、働くうえで大切なことですよね。私は今1人で働いているので上司はいないんですが、上司になってもらうなら、とにかく愛情深い人がいいですね。海のように広い心を持っている人(笑)
仕事をするのは何のため?転職して得たやりがい

インドネシアの子どもたち
かおり:田丸さんは、アース・カンパニーさんに転職してちょうど半年ということですが、仕事のやりがいはどんなふうに変わりましたか?
田丸さん:以前のコンサルの仕事では1日16時間ぐらい働いて、その先に何があるかというと、クライアントは喜んでいるけど社会が良くなっているかは別問題という事実でした。たとえば、僕が関わったとある企業の化粧品の売上が1割伸びたとしても、それで世の中に良い影響があるのかは本当のところわからないまま。
でも、アース・カンパニーに転職してからは、この仕事で成果を出すことが社会に貢献することに直結するので、以前感じていた葛藤がなくなって精神衛生上とてもいいです。
かおり:自分の仕事がどんな価値を生み出しているかって、働くうえですごく大切な問いですよね。私も以前、企業の専属ライターとしてWEB記事を執筆していたときは、自分の書いている記事が世の中を良くしていると信じられなかったので、すごく苦しかったんです。
9カ月在籍していましたが、毎日浮かんでくるのは疑問と憤りばかり。「こんなやり方で社会が良くなるはずがない」って。実際そのメディアはめちゃくちゃ炎上していましたし。でも、その想いを上司たちにぶつけても、まったく取り合ってもらえませんでした。
その悔しさがあってフリーライターになり、今は自分が価値があると思う記事だけを世の中に発信できることが嬉しくてたまりません。
明日香さん:人って本来誰しも「人の役に立ちたい」って想いを持っていて、自分が動いたことで誰かが笑顔になったら絶対に嬉しいはずなんです。でも、自分がやっていることが人を喜ばせることにつながっていない現実があり、悶々としている人によく出会います。それは、被災地のボランティアマネージメントをしているときに実感しました。

東日本大震災でボランティアマネジメントを行なっていた際の明日香さん
かおり:そうですよね。自分の発した言葉や行動で目の前の人が笑顔になったり、ダイレクトにリアクションが見られると、ものすごい充実感を得られると思います。
明日香さん:人は生まれたときから死ぬまでずっと、「自分の存在意義」を問い続けながら生きていきますが、現代社会では自分の存在が何につながっているのか実感する機会が少なく、迷いを抱えている人がすごく多い気がします。
かおり:私はフリーランスになって、自分の歩む道をすべて自分で決めるようになって、ようやく自分の存在意義を見いだせたので、苦しい思いを抱えている会社員の方には一度フリーの道をオススメしたいですね。

フィリピンにある何もなくて豊かな島「カオハガン島」を取材した際、島の子どもたちと一緒に。記事はこちらから
バリについてからWEBを通じて見つけたのが「アース・カンパニー」さんでした。ダメ元でインタビューのオファーをしたところ、翌日すぐにお返事が返ってきて快くOKをくれたんです。感動!
みなさんとお話するなかで、自分が知らないだけで世の中には深刻な問題がたくさんあること、その問題に背を向けてはいけないことを強く感じました。世の中にはリーダーとして人に指示する人とその指示を受ける人がいるけれど、「受け身でいていい人なんて1人もいない」と私は思います。
1人1人が地球上で生きる主人公なのだから、みんなが自分自身の存在意義を見つめながら主体的に動き、助け合い、この美しい地球を守っていかなければ。
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