年々、フリーランスや個人起業家、または副業として個人で仕事を始める人が増えています。個人が「好き」や「得意」を生かして収入や豊かさを得やすい世の中になったのは、とてもいいことだと思いますが、それに比例してトラブルも増えている模様。
私自身もつい先日、これまでの経験や身近な人の意見では判断し難いトラブルが発生しました。結果的に弁護士さんに無料相談をさせていただき事なきを得たのですが、「今までと同じ感覚で仕事をしていたらマズい」と危機感を抱きました。

フリーランス協会の中山綾子さん(写真右)と一緒に
そこで今回は、弁護士さんからいただいたアドバイスに加え、「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」の理事である中山綾子さんに「フリーランスと企業のトラブル対策」についてインタビューさせていただいた内容をまとめました。
現在フリーランスとして働いている人はもちろん、これからフリーランスになりたい人やフリーランスに発注する企業側の方にも、絶対に知っておいていただきたい内容です。「企業と個人、どちらも幸せに働ける世の中にしたい」、そんな願いを込めて書きました。ぜひ、参考にしていただけたら幸いです。
〜目次〜
フリーランスと企業間でのよくあるトラブル事例

まずは、フリーランスと企業の間で起こりがちなトラブル事例をご紹介します。私自身がライターということで、ライターのような請負契約でのトラブルがメインです。
- 成果物を納品しているのに報酬が振り込まれない
これは各所で聞くトラブル事例。成果物を納品してOKをもらい、請求書を送っているのに報酬が支払われないという。クライアントの経営状態が良くないとか、スタートアップで経理周りの体制が整っていない、なんてことが多いようです。こちらから問い合わせてやっと支払ってもらえた、という経験が私にもあります。
- クライアント都合で成果物が公開(発売)されないために、報酬を請求できない
よくライター界隈で聞かれるのが、「記事が公開されないから報酬を請求できない」という悩み。クライアントや媒体の都合で公開や発売が遅れるという事情もわかりますが、2カ月以上ズレ込んでくると地味にツラい。
- 仕事を依頼されたあとに相手都合でキャンセルされた
これも、わりと「あるある」かもしれません。キッチリ契約書を結んでいない場合は、どこからが「契約」なのかがわかりづらいんですよね。「申し訳ありません」の一言で直前にキャンセルされたなんて人もいましたが、1人で業務を回しているフリーランスにとっては死活問題。
- クライアントがとんでもないクレーマーだった
初めての企業とお付き合いをする際、事前にじっくりとお打ち合わせをするのはもちろん、HP情報やネット状の口コミ、周囲の人に聞くなどして情報収集をする人は多いと思います。とはいえ、実際に付き合ってみないとわからないことも多く、事前の打ち合わせと異なる指摘が相次いだり、こちらのスケジュールをすべて把握しようとしたりする企業もいるとか。怖っ!
- 知人の紹介で「友だち価格」で請けたら散々こき使われた
フリーランスは知り合いからの紹介で仕事につながるのが日常茶飯事。時には、お世話になっている相手からの仕事を「友だち価格」で請けることもあるでしょう。ただ、親しいのをいいことに安いギャラで散々こき使われる……なんてこともあると聞きます。お互いに相手を尊重する気持ちがないと、仕事として成り立たないですよね。
条件を「なぁなぁ」にするとトラブルに陥りやすい

このようなトラブルは、なぜ起きてしまうのか。どうすればトラブルを未然に防ぐことができるのか。フリーランス協会の中山さんにお聞きしました。
かおり:フリーランスと企業間のトラブルが起こる原因は、どこにあるのでしょうか?
中山さん:やはり「条件があいまい」のまま仕事を請けてしまうと、トラブルのもとになります。出版編集業界はスケジュールやギャラが決まらないまま動き出す、みたいな文化が見られますよね。加えてクライアントが中小企業やベンチャー企業ですと、契約書の締結を持ちかけられることが少ないようです。
かおり:私も紹介からつながったクライアントさまと契約書を締結しないまま、お仕事をしているケースもあります。うまくお仕事が回っているうちは問題ないですが、何かあったときに揉めることもありえますよね。
中山さん:フリーランス側が条件を「なぁなぁ」にしてしまうと、企業側も同じような態度になってしまうんですよね。今、ちょうど働き方が変わってきている過渡期なので、業務を切り出す企業側もフリーランス側もどちらも互いにスタンダードをアップデートし、働き方を変える意識を持つことが必要だと思います。
企業と個人が対等に仕事をするためにやるべきこと

かおり:トラブルを防ぐために、私たちフリーランスは具体的にどんなことに気を付けるべきでしょうか?
中山さん:お仕事をスタートする前に、契約書、またはそれに準ずるような書面のやり取りを残すことが一番です。契約書には「請求の締めと支払日」「納品後に公開するまでの日数の期限」「もし成果物がお蔵入りになった場合の対応」「契約後のキャンセルにまつわる取り決め」など、細かい条件も盛り込んでおきましょう。
かおり:契約書のテンプレートは用意しておくべきですか?
中山さん:はい、プロジェクトベースの場合、納品ベースの場合など複数のテンプレートを持っておいて、数字を変えるだけで使い回せる状態にしておくのがベストです。
かおり:私たちがクライアントに「契約書の内容に合意してもらえなければご一緒できません」と強気で言えればいいんですが、やっぱり下請けという立場上、交渉しづらいんですよね……。
中山さん:契約書は片方を守るものではなく双方を守るものですので、「お互いのトラブル防止ために契約書を締結しましょう」というスタンスでお伝えすると良いですね。あとは、架空のアシスタントをつくって言いづらいことはアシスタントから言わせる、という人もいましたよ。
かおり:架空のアシスタント!? それは頭のいいやり方ですね(笑)。ただ、人によっては契約書で明確に役割を決められてしまうと動きづらいとか、シナジーが生まれづらいと話していた人もいました。
中山さん:基本的に「アドオン歓迎」というスタンスで、最低限の項目だけ固めて「追加の業務は別途ご相談」としておくといいと思います。一番マズいのは、金額やスケジュールなど最低限の項目もふわふわしている状態で、お仕事をスタートしてしまうことです。
知っておきたい契約書のテンプレとクラウド契約サービス
続いて、フリーランスの方に参考にしてほしい契約書のテンプレートと、印刷や郵送が必要なく、オンライン上で契約が交わせるクラウドサービスをご紹介します。
- 一般的な業務請負契約書(無料)

独立行政法人経済産業研究所が提供する契約書
ネット上で検索していて見つけた「業務請負契約書」のテンプレートがこちら。広くどんなフリーランスの方でも使えそうな文面です。こちらからPDF形式でダウンロードが可能。この文面をベースにアレンジを加えると良さそうです。
- フリーライターに特化した業務委託基本契約書(7,560円)
7,560円と有料ですが、フリーライターに特化した業務委託基本契約書+個別契約書のセット。基本的な事項は網羅されていると思いますが、「公開までの日数」「お蔵入りになった場合の対応」「一方の都合によるキャンセルの対応」などの文言は追記する必要がありそうです。
※購入はこちらから。
- クラウド契約サービス「CLOUDSIGN」(無料プラン有り)
ユーザー数1名、月10件までなら無料で契約書が締結できるフリーランスにやさしいサービス。これは登録しておけば、いつでも使えて便利かも! フリーランス協会の中山さんに教えていただきました。※自分のアカウントを使うこと、PDFを保存しておくことをお忘れなく!
※登録はこちらから。
- GMO電子契約サービス Agree(無料プラン有り)

GMO電子契約サービス AgreeのHPより
ユーザー数2名、月10件までなら無料で契約書が締結できるサービスがGMOから出ていました。CLOUDSIGNもAgreeも一定数までは無料で使えるので、自分にとってより使い勝手が良さそうなサービスを選ぶと良さそうですね。
※お申込はこちらから。
【頼れる相談窓口一覧】トラブルにあったら一人で悩まない
最後に、私自身も助けられた無料の相談窓口を掲載しておきます。いざというとき、本当に頼りになるので、もしもトラブルにあってしまったときや企業との交渉で悩んだときに、活用してください。迷ったら一人で悩まないでくださいね!

公正取引委員会のHPより
フリーランスと企業の問題は、「下請法」に該当する場合が多いそうです。ただし、下請法は資本金が1,000万円を超える企業しか対象にならないのでご注意ください。(2019年7月現在)
【下請法の相談・申告窓口】
TEL:03−3581−3375
※管轄地域が限られているので、一度HPでご確認ください。
下請法に該当しない場合やクライアントが中小企業などの場合は、こちらに問い合わせてみると良いかもしれません。
【下請けかけこみ寺の相談窓口】
TEL:0120−418−618
今回、私がお世話になったのは、ひまわりほっとダイヤルでご紹介いただいた弁護士さんでした。電話して数日後にアポが取れ、丁寧にお話を聞いたうえで明確な解決策を提示してくださいました。事前のメールのやり取りで一連の流れをお伝えしておくことができたので、30分の時間内で済みました。頭が上がらないぐらい、心からありがたかったです。
【ひまわりほっとダイヤルの相談窓口】
TEL:0570-001-240
いざというときに守ってくれる「保険」も検討しよう
今回、取材にご協力いただいたフリーランス協会では、フリーランス向けの「保険付き福利厚生サービス」や「所得補償制度」を運用しています。何かと不安定なフリーランスにとって安価で使いやすい優良サービスですので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?
- 年会費1万円の保険付き福利厚生サービス「ベネフィットプラン」
以下のサービスが丸っと受けられて年会費は1万円のみ! チャットワークの無償アップグレードだけでも半分元がとれちゃいますね。
・フリーランス賠償責任保証
・福利厚生(健康サポート・子育て両立支援・スキルアップ支援・リラクゼーション優待・各種相談ダイヤル)
・コミュニケーションツール(有料プランが無料で使えるなど)
・会計ツール(無料使用期間の延長など)
・金融サービス(手数料の優遇など)
・法務税務相談、バーチャルオフィス、ワークスペース、デザインツール、カウンセリング、ヘルスケア、家事代行、その他(利用料の割引など)
・研修、コンサルティング
・ジョブマッチング
※会員登録はこちらから。
- ケガや病気による不安を解消する「所得補償制度」

フリーランス協会の所得補償制度のWEBページより
こちらは、自分自身のケガや病気により一時的に収入が減ってしまった場合に所得を保証してくれるほか、入院費や家族の介護費などを受け取れる保険。保険料は【年齢】と【年収】によって決まり、WEBページで保険料のシミュレーションが瞬時にできます。
いざというときに守ってくれる制度なので、決して高い金額ではないと思います。私も入会を真剣に検討しています。
※資料請求や各種お問い合わせはこちらから。
フリーランスは「使い捨ての駒」じゃない。企業と対等であるべき
一個人の私たちの意見に耳を傾け、真摯に対応してくださる企業が多い一方で、「君の代わりはいくらでもいる」、そんな使い捨ての駒のようにフリーランスを雑に扱う企業が存在しているのも事実。
企業側に意見するたびに、何かミスをするたびに、「仕事が振られなくなるかもしれない」「悪い噂を流されるかもしれない」など、一人でやっているフリーランスの多くは、常に目に見えない不安と戦っています。精一杯お仕事をして成果をあげていたとしても、不本意に打ち切られることもあります。
ですが、フリーランス協会の中山さんもお話しされていたとおり、本来、私たちフリーランスと企業は「対等な立場」であるはずです。企業はフリーランス側の主張に対して真摯に対応すべきだし、フリーランス側も言うべきことはきちんと伝えるべき。トラブルにあったことを機に、私も今一度クライアントとの付き合い方を改めようと思いました。企業側とフリーランス側のどちらにも、この記事が届くことを願ってやみません。
〜取材協力〜
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会