【イベントレポ】中込孝規&鈴木掌—ダンスとアートで世界をつなぐ人生学—




こんにちは! フリーランスライターの小林香織です。このAfrica Quest.comでライターをはじめてから1カ月半。まだアフリカに行ったことがない私も、だんだんとアフリカのコミュニティに染まってきたかな〜なんて嬉しく思っています♪

今回は2017年9月9日(土)に青山の地域国際交流と多言語・多文化理解を目的としたコミュニケーションスペース「Glocal Cafe Aoyama」で行われたイベント、「中込孝規&鈴木掌—ダンスとアートで世界をつなぐ人生学—」のレポートをお届けします!

豆の香りを楽しめる本格的なコーヒーとクラフトビールも飲める「Glocal Cafe Aoyama」

日本とは生活環境も文化もまったく異なるアフリカを舞台に、スケールの大きな夢を追いかけ続けるお2人が見つけた大切なものとは……? 中込さんと鈴木さんの体験を通して、アフリカが持つ秘めたエネルギーも感じられるはず。

ダンス教室代表&世界一周ダンサー・中込孝規

爽やかすぎる笑顔とド派手なアフリカン・プリントの洋服がトレードマークの、世界一周ダンサー・中込孝規(なかごめ たかのり)さん。会場を埋め尽くした40人以上のお客様を前に、中込さんは挨拶代わりにダンスを踊ります。

その後は、会場のみなさんも立ち上がってDancing! 一気に和やかな空気に。

実は私、これまでにスポーツ系の媒体で二度も中込さんをインタビューしています。全身全霊で書いたその記事は周囲から大好評だったので、記事の末尾でご紹介しますね(笑)。

世界一周ダンサーの肩書で活動している中込さんの現在の活動は、以下の3つ。

1、「世界とつながるダンス教室」の運営
2 、全国各地でのワークショップ開催
3、グローバルシェイパーズのメンバーとして会議等に参加

中込さん「拠点を神奈川県の平塚市に置いて、『世界とつながるダンス教室』を運営しています。レッスンは平塚と渋谷で行っていて、子供クラス・大人クラスがあります。ワークショップは、ダンスを通じて世界と日本の子どもたちをSkype中継でつないだり、「夢を叶える」などのテーマで講演したり。

あとは、グローバルシェイパーズと呼ばれる『世界経済フォーラムによって任命される33歳以下の若者によるコミュニティ』に所属し、国際情勢とか国際経済のお話などにも参加させてもらっています」

早稲田大学を卒業後、「こどもちゃれんじ」などで知られるベネッセに就職。4年勤めたあと退職し、世界一周に旅立った中込さんは、この旅がキッカケとなり、人生をかけて叶えたい夢を見つけました

左から小学生→高校生→大学生→現在。中込さんの変化を映した貴重なショット(笑)

中込さん「僕はひねくれた性格の子どもで、高校生のときはイジメにも遭いました。いつも死んだ魚のような目をして、ずっと人が怖いと思ってた。でも世界一周という夢があって、勇気を出して日本を飛び出してみたら、世界中に友達ができて世界が一気に身近になった

そして、子どもたちにダンスを教えながら世界を回ったことで、『世界中の子どもたちをダンスでつなげて、子どもたち同士が仲良くなれる世界をつくりたい』という想いが芽生えました。思いきって夢を叶えたことで、もっと大きな夢を手にすることができたんです」

アフリカも日本も「変わらない」と気づいた

中込さん「世界一周中は、とにかくたくさんの人と出会いました。ラオスではダンサーの男の子と仲良くなって、彼に誘われて映画祭に出て数千人の前で踊ったり、いま隣にいる鈴木さんとはルワンダで出会って、彼が経営していたバーに1カ月寝泊まりさせてもらいました。深夜までお互いの夢とか旅のことを語り合って、すごく充実した時間でしたね」

世界を転々としながら数えきれない出会いを紡ぐなかで、中込さんは大きな気づきを得ます。

中込さん「各国の学校や孤児院、道端などで子どもたちにダンスを教えていたんですが、そのなかで感じたのが『どこに行っても子どもたちって同じなんだな』ということ。僕がロボットダンスを踊ると、物陰に隠れて見ていた子どもたちが『なにそれ!?』って目をキラキラさせて出てきて、そのうち打ち解けて仲良くなったら、みんなで一緒にはしゃぐ、みたいな。

日本の子もアフリカの子も、最初は同じようにシャイなんです。だったら、この子たちって仲良くなれるんじゃないかなと思いました。肌の色や言葉や文化を超えて、人と仲良くなれる楽しさを僕自身が実感していたので、子どもたちにもその楽しさを感じてもらいたいと思って、世界と日本の子どもたちをつなぐ活動を始めることにしました」

中込さん「この映像に映っているは、東アフリカのマラウイ共和国の子どもたちです。もう言葉なんていらないですよね。一緒に踊れば、年齢も性別も国籍も問わず仲良くなれるんです」

この映像は、私も大好きで何度見てもニヤけてしまう。踊るのって恥ずかしさを伴うんですが、それを乗り越えると、言葉では表せないほどの楽しさとか充実感があるし、なんといっても人と仲良くなるための最高のコミュニケーションツールだなと感じています。

中込さん「これはガーナのよさこいダンス。よさこい感はないけど(笑)、めちゃくちゃカッコいいですよね」

確かに! 手足が長くてスタイルがいいし、動きにキレがあって見入ってしまいます。

ダンスを通じて、人にも自分にもやさしくなれる

中込さんは2014年に世界一周を終えたあと、2016年にはクラウドファンディングを実施し、「日本とアフリカの子どもたち2,000人をダンスでつなくプロジェクト」を見事成功させました

中込さん「2度目のアフリカ渡航は大成功だったものの、葛藤もたくさんありました。たくさんの幼稚園や学校でダンスワークショップを行うなかで、ガーナで出会った先生に『あなたの活動は子どもたちにとって、どんないいことがあるの?』みたいに聞かれて、ハッキリと説明ができず言葉に詰まってしまったんです。

授業の時間をもらっているのに、お祭り騒ぎみたいな感じで終わってしまう。自分の活動は自己満足なんじゃないかって思うようになりました。でも、突き詰めていくなかで『もっと先生や子どもたちの思いを聞きながら、丁寧にやっていこう』と前向きな考えに変わって。そのあとに訪れたルワンダでは、1カ月間同じ学校に滞在し、アフリカと日本の子どもたちがすごく仲良くなって、最高の場をつくることができました

一大プロジェクトを終えた中込さんは、平塚に「世界とつながるダンス教室」をオープン。一人一人の子どもと向き合いながら、丁寧に活動を進めています。

中込さん「ダンス教室では毎回子どもたちの前向きな変化を見られて、すごく幸せです。大人クラスも毎回楽しく踊って、素敵なコミュニティができています。来年、再来年にはアフリカの子どもたちを日本に呼んで、リアルな出会いの場をつくりたいですね。それが実現したら、きっと僕の涙腺は崩壊しちゃうと思うけど(笑)」

アフリカと日本の子どもたちが、同じ空間で一緒にダンスを踊る。その幸せな光景が見られる日を私も楽しみに待ってますよー! 最後に、中込さんがこれまでの人生で得た大切なことについて話してくれました。

中込さんダンスには自分にも人にもやさしくなれる力があるんじゃないかって思うんです。ダンスを通じてお互いの違いを知って、その違いを自然とリスペクトできる。みんな違っていて全員がカッコいいと僕は感じています。そして、相手をリスペクトするのと同時に自分にも自信が持てる。そんな輪が広がっていくことで、やさしい人になれるのかなって思っています。

僕は自分自身がワクワクすること、大好きなことを続けるなかで、夢が見つかり人生の可能性が広がりました。自分の人生の責任をとれるのは自分だけです。まずは、小さな一歩でいいからやりたいことに踏み出してみてください!」

生命のエネルギーを表現するアーティスト・鈴木 掌

続いては、アーティスト・鈴木 掌(すずき つかさ)さんの登場です。一度見たら忘れない、強いエネルギーを感じるような鈴木さんのアート作品が私も大好きです。気になる方は、ぜひ鈴木さんのオフィシャルHPをご覧ください。

会場では鈴木さんの個展も開催されていて、イベントに来場したお客さんも思わず見入っていました。ここからは、中込さんと鈴木さんのクロストークでお楽しみください!

中込さん:実は僕も、鈴木さんが何者なのかがわかりきっていないんですよね。

鈴木さん:やりたい放題ですからね、僕(笑)。現在は日本を拠点に、「ATOMIC JUNGLE(アトミック ジャングル)」っていうブランド名で画家の活動をメインでやっています。壁画を描いたり、ミュージシャンとセッションして即興で絵を描くライブペイントをやったり。自分の腕一本でアーティストとして活動してますね。

 

中込さん:鈴木さんの絵は、鈴木さんならではの独特な色使いで、すごくカッコいいですよね。

鈴木さん:ありがとう! 僕の絵は生命の持つエネルギーを表しています。このカラフルなライオンは、ルワンダで寄生虫にかかって死にかけたときの、目がチカチカする恐怖をポジティブに表現しているんです。

中込さん:目がチカチカ? なにそれ(笑)

鈴木さん:「死ぬかも」って思った瞬間って、目がチカチカしません?(会場無反応)この感覚、誰にも共感してもらえないんだよね(笑)

中込さん:(笑)。鈴木さんの経歴を聞いてもいいですか?

鈴木さん:僕は日本では服飾の専門学校を卒業して、その学校の助手を3年やりました。石の上にも三年っていうでしょ(笑)。助手を離れてからは、何か自分の力でできないかなって思って、舞台衣装とかウェディングドレスのオーダーメイドで制作したり、路上で似顔絵を描いたり……。

中込さん:いきなり画家の活動が出てきた!(笑)

鈴木さん:あはは(笑)。細かく話すとキリがないんだけど、似顔絵って人と仲良くなるための最高のツールなんだよね。アウェイなコミュニティでも、似顔絵を描けば仲良くなれるし。絵は小1のときから描いていたし、デザインの勉強でも絵を描いてたから。

ただ、1年間いろんな活動をしていたけど、自分のステージが上がっていかないという行き詰まりを感じていて。人とまったく違うことに挑戦するしかないと思って、青年海外協力隊という形でアフリカ行きを決めました。

ルワンダで洋裁技術を指導し、約200人のテーラーが誕生

鈴木さん:ルワンダでは農村で洋裁訓練のボランティアを2年間やっていて、学校や工房を回って洋裁を教えていました。僕がデザインした商品を現地の人たちが作って販売したり。休日はブレイクダンスしたり、現地の子どもたちと音楽セッションしたり、いろいろやったなぁ。

中込さん:そうそう、鈴木さんもダンスやってたんだよね。

鈴木さん:ルワンダの映画にダンサーとして出演したこともある(笑)。ローカルな場所に出入りして、たくさん仲間をつくっていたら「映画に出ない?」って誘われて。そのうち、仲間のなかから洋裁とか絵画の弟子をとって、いろいろ教えるようになりました

中込さん:こんな協力隊の人いないよね(笑)。

鈴木さん:ボランティア活動が終わってからは、京都のNPO団体「リボーン・京都」にヘッドハンティングされて、洋裁専門家として再びルワンダに派遣されました。ルワンダの洋裁レベルを底上げすることがミッションで、JUKI電動工業ミシンも入れて日本の専門学校と変わらない設備で教えてました。

2年間でトータル200人ほどのテーラーを育成して、全員の就職先を見つけるところまでやって、引き渡してきました。

鈴木さん:あ、そうそうルワンダでは家も建てたなぁ。現地でたくさんそろえた道具を保管しておく場所がほしいなって思って。セメントで固めて電気も入れてトイレも洋式で、3部屋あって、土地代も含めて総額30万。驚愕の安さでしょ(笑)。

中込さん:何してるの(笑)。なんかすごい場所に建ってるね。日本人だったら、家までたどり着けないだろうね(笑)。

未知の才能を目覚めさせ、ルワンダに新たな文化を作りたい

中込さん:鈴木さんが現地で経営していたバーも、一からつくったんだよね。

鈴木さん:そうそう。バーをつくろうと思った理由は、ルワンダで出会ったたくさんの才能をプロデュースする場所が欲しかったから。彼らはシャイだけど、すごくいい才能を持っているんです。異空間のような場所にしたくて、凝った内装を手作りしました。バーをキッカケに多国籍のバンド活動も始めて、俺はボーカルとハーモニカを担当してました。

中込さん:そう! 鈴木さんって歌もうたうんですよ!

鈴木さん:アフリカ人のほうが歌はうまいんだけど、アフリカ人からすると自分たちが出せない声を持ってる日本人の歌声がおもしろいらしくて。俺が歌うとすっごい盛り上がるんだよね。アフリカ人の演奏に合わせて、ルワンダ語の歌をうたってました。

ルワンダのバーのメンバー&中込さん(後列右から3番目)&鈴木さん(後列左から3番目)

中込さん:鈴木さんはバーの店員さんとか住んでた家のガードマンとか、みんな雇ってたよね。それは本当にすごいと思ってました。

鈴木さん:ガードマンで雇っていた彼は1年間真摯に働いてくれて、すごくいい男だったので、このまま安月給のガードマンで終わらせてしまうのはあまりにもったいないと思って、建築の学校で学ぶための学費を出資しました。ちょうどバーを作るために大工が必要なタイミングだったので。と言っても、四半期で8,000円ぐらいですが。

中込さん:いや、でも彼だけじゃないでしょ。すごいですよ。

鈴木さん:でも、バーは経営的にキツくて結局やめてしまって。ただ、才能ある人たちが目覚めるような場所をルワンダに作りたいという想いはずっと持っています。ルワンダってストリートパフォーマンスが禁止されているんだけど、それを合法的にできる大きな空間を作りたい。

とはいえ利益をあげられる確証がないので、それなら「アート活動です」って言いきっちゃえばいいと思って、1年半前から画家の活動を始めたんです。

コーヒーで色付けした鈴木さんのアート作品。生命の力強さと神秘を感じました

中込さん:アート活動を始めるまでに、いろんな背景があったんだね。

鈴木さん:昔からずっと「文化を作りたい」っていう夢があって、そのためにファッションから入ろうと考えて、まずはデザイナーを目指しました。洋裁とか音楽とか絵とか、いろんなことを覚えられる才能が自分にはあるので、それをルワンダで教えて文化を作っていきたいなって。

エグい失敗も散々してきたけど、僕にとって動いていないことは概念的には“死”と同じなんです。自分が今やりたいことには、人生をかける価値があると思える。だから、これからも夢に向かって動き続けます。

「生きる目的」すなわち「人生の使命」と言えるものを見つけたお2人は、エネルギーに満ちあふれてキラキラしていました。これはアフリカのコミュニティに入ってからずっと感じていることですが、アフリカの地に足を踏み入れると、何かしら「生きる目的」を見つけて輝いている人が多いんですよね。

アフリカの人の生き方や文化に触れた人たち、そして太陽のような明るさを持つアフリカの布からも、並々ならぬ生命力が湧き出ている気がして、だからこそ私も無性にアフリカに惹きつけられてしまうのだと思います。一生に一度は、誰しもがアフリカを訪れたほうがいいのかもしれない!(笑)そんなことを感じた幸せな一夜でした。

*中込孝規さんの公式サイトは、こちら
*鈴木 掌さんの公式サイトは、こちら

私が以前に中込孝規さんをインタビューした記事はこちらです。ぜひ、あわせて読んでいただけたら嬉しいです!

・1万人の子供にダンスを教えて世界一周!震えるほどの感動が待っていた-ダンサー中込孝規(前編)

ダンスは最高のコミュニケーションツール!価値観を変えてくれたアフリカの旅-ダンサー中込孝規(後編)

「日本とアフリカの子供2,000人をダンスでつなげたい」、共感の輪からはじまった旅—ダンサー・中込孝規(前編)

心に国境なんて必要ない。子供たちの未来を開くダンスを−ダンサー・中込孝規(後編)

 




ABOUTこの記事をかいた人

【フリーライター/北欧イノベーション研究家】1981年、埼玉県生まれ。「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6ヵ月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材しました。2022年3月より東京拠点に戻しつつ、北欧イノベーションの研究を継続しています。