8月にも関わらず、その日は、大粒の雨が降る肌寒い日だった。インスタ女子であふれる渋谷のカフェで、久しぶりに彼女と待ち合わせた。
彼女は、恋愛エピソードを赤裸々に綴ったブログ「小手先だけの人生で十分です」を運営する、32歳・独身女性の土屋由貴。編集・ライター養成講座の同期である彼女とは、「ゆきりん」「かおりん」と呼び合う仲で、私は彼女を人として「魅力的な存在」だと感じている。
なぜなら、ゆきりんは私にはない“頭の良さ”と(いい意味での)“意味不明さ”を持ち合わせているから。突然お笑いの道を志してみたり、私生活をさらけ出したブログを始めてみたり、「ゆきりん、次はどんなこと始めるんだろー?」とワクワクさせてくれる人なのだ。
そんな彼女の価値観を織り交ぜることで、深みのある恋愛記事が書けるのでは? と考えた。
お互いOLという道を捨て、東京で生きている独身女性。とはいえ、まったく性格が異なるふたりの恋愛トークは、思わぬ方向に進むことになる。
わたし、努力の仕方をまちがえてるかも?

かおり:最近、自他ともに認めてるんだけど、私、年齢に負けてると思う。
ゆき:かおりんって今いくつだっけ?
かおり:誕生日きて36になったよー。
ゆき:マジ!? 全然負けてないと思うけど。
かおり:それって多分、年齢よりは若く見えるってことだと思うけど、周囲からの見え方云々じゃなくて、自分の気持ちが負けちゃってるんだよね。数年前はちょっとムリ目の相手でもがんばれたけど、今は「もういいやー」ってすぐあきらめモードになるし。
ゆき:付き合う相手の年齢を上げていけばいいんじゃない?

ミラーボールとどでかい唇の壁画がフォトジェニックな、渋谷のカフェ「FLAMINGO」
かおり:なんでかわからないけど、年下の人にしか出会わないの。30を過ぎてから、好きになった人も、付き合った人も全員年下。
ゆき:この高齢化社会で、そんなことありえる?(笑)私は相手が年下だなと思ったら、その時点で恋愛感情が消えるんだよね。男女問わず年齢を重ねてる人のほうが一緒にいて楽だから。かおりんは、そもそも何で年下の人が好きなの?
かおり:好きになった人とか、好きになってくれた人が、たまたま年下だったこともあるんだけど、なるべく若さを保ちたいって思うから、若い人と一緒にいたら、自然と自分も若くいられる気がして。
ゆき:かおりんが若く見えるから、40代の人とかが、あえて声をかけないのかもね。
かおり:あ〜。自ら年上の人と出会うチャンスを逃してるってことは、確かにあるかも? 素敵な年上男性も、きっとたくさんいるはずなのにね。私、努力の仕方をまちがえてるのかもしれない(笑)。
男性よりも「人生」に恋してる?

かおり:ゆきりんは年上が好きって言ってたけど、年下の人との出会いもありそうだし、気も合いそうじゃない?
ゆき:20代の人って、いきなり「世界一周行ってくる」とかありえるし、私、そういう大きな夢を待ってるの面倒なんだよね。
かおり:私は一緒に行きたいけどな(笑)。「来月、タイで1カ月住んでみる?」とか、おもしろい人生のチャレンジを一緒にできたら理想的。でも子供ができたら、子供の存在自体がおもしろいから、環境を変えなくても飽きずに、毎日ワクワクできそうだなって思う。子供って未知の存在で、ただいるだけで非日常をつくり出してくれる気がして。
ゆき:かおりんって「恋する旅ライター」そのまんまで、「いつでも男性にトキめいてます」って感じだと思ってたけど、恋そんなに求めてなくない? なんていうか、今は恋愛というより「生き方」なんだろうね。興味の対象が。
かおり:あ〜、そうかも。ライターとして世の中に届けたいテーマも「生き方」だし。男女関係なく生き方に惚れた人にインタビューして、人生の選択肢を提供したいというか。

ゆき:恋愛よりも、自分の理想の生き方を求めてるところなのかもね。
かおり:毎日ワクワクしていられるのが理想的で、今はそのために、「自分が何をしたいか」を大事にしてるかもしれないなぁ。
ゆき:誰かに頼りたいとか、誰かに決めてほしいみたいなのはない?
かおり:フリーランスになってから、それが変わったんだよね。会社に所属してたら、ある程度守ってもらえたり導いてもらえるけど、私はそれを自ら放棄して自由を選んだわけだから、突き放されて当然だと思ってて。
ゆき:恋愛でも自由を求める?
かおり:恋愛では自由が一番じゃなくて、お互いのやりたいことを、心地いいバランスでシェアすることを最優先にしたい。「俺はやりたいことやるから、お前も好きにやりなよ」って言う人が一番イヤ。できたら共有できることは、全部共有したい。
ゆき:会社とはできないけど、一人の男性となら譲り合いとかシェアができると。
かおり:うん、うん。むしろ、どんどんシェアしたい。
「女」目線と「男」目線。正解はどっち?

かおり:ゆきりんって憧れの女性像とかある?
ゆき:ないなぁ。
かおり:私もないんだよね。しいて言えば、井川遥とか。エロすぎない色気があって、包容力と可愛らしさが共存してる感じが好き♡ でも「井川遥になりたい!」って感じでもないし……。わかりやすい憧れの存在がいないから、いちいち迷うのかなって。素敵な女の人に出会ったら、ちょっとマネしてみたりはするけど。
ゆき:女の人を見てるんだね。私の場合は、素敵な男の人と出会ったときに、「この人に好かれるには、こうしたほうがいいな」って考えるのはあるかな。私は頭が良くて稼げる人が好きだから、そういう人と仲良くなれる女性ってどんな人かなってイメージして、自分をそこに近づけるというか。相手と距離を縮めるなかで、この私じゃないなと思ったら、臨機応変に変えていくし。

かおり:好きな人を基準にして、そこに合わせていくのね。あ、でも私も好きな人の好みがわかれば、そこに合わせるかも。けど普段は、好みの女の人に目がいってるかもしれないなぁ(同じ女として魅力的だと思う人ね)。単純に可愛い女性が好きで、自分もそうなりたいんだと思う。見る方向をまちがえてるのかな(笑)。
ゆき:誰かを目指しても、別の誰かになれるわけじゃないからね。でもライターっていう職業的には、自分にはない相手の魅力を見つけることって、必要な要素じゃない?
かおり:うーん、男女関係なく、自分と共通点が多い相手のほうが書きやすいし、評価される記事になりやすいけどね。相手の魅力を引き出すのは、まだまだ勉強中かな。ただ、同性と自分を比べるのは、なるべくやめようと思う(笑)。
*後半戦「【OLを捨てた独身女の人生観】待つのは、もうやめる。私たちが出した「自由」の終着点」は、こちらからどうぞ♡